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 秋の味覚の代表格、サンマが旬を迎えている。近年は記録的な不漁が続き、「高級魚」とも呼ばれたが、今年は「豊漁」で手ごろな価格で販売されている。ただ、今後は不漁との予測もあり、専門家は「食べるなら今が好機」と指摘する。

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「魚河岸 中與商店 武蔵小山店」では旬を迎えたサンマが並び、多くの客が買い求めた=2024年9月27日午後1時9分、東京都品川区

 「サンマがやすいよ。1本200円」。9月末、東京都品川区の鮮魚店「魚河岸 中與商店武蔵小山店」で店員の威勢の良い声が響いた。店を経営する中島水産によると、サンマは2匹400円ほどで、例年よりも2~3割ほど安い。チーフの山崎進一さんは「今年は去年よりも脂がのっていて太い」と話す。

 サンマは8月から12月にかけて、北海道や東北地方などで水揚げされる。今年は出足が好調だった。

 一般社団法人漁業情報サービスセンターによると、8月の水揚げは昨年の4倍超の2611.1トン。北海道根室市から東に1千キロほど沖合の公海に、昨年より多くのサンマが集まったことが最大の要因という。また、近年の極端な不漁を受け、全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)が、主力の大型船が公海に出漁できる日を例年より10日間前倒しした異例の措置も後押しした。

 国内最大の水揚げ量を誇る根室市の花咲港では、まばゆい銀色に輝くサンマが連日水揚げされ、船からトラックへと積み込まれている。9月25日には今季最高となる955.1トンの水揚げを記録。1千トンの大台に迫る久々の水揚げに、港は活気づいた。9月単月でみても、サンマ水揚げ量は昨年の約1.6倍で、流通業者の間では「豊漁」との言葉も飛び交う。

シーズン当初は好調、でも

 ただ、今年のサンマの来遊量について、水産研究・教育機構は7月の「サンマ長期漁海況予報」(道東~常磐海域)で、「昨年と同レベルで低水準になる」との予測を公表している。史上最低となった一昨年の1万7910トンは上回るものの、通年では昨年と同程度とみる専門家もいる。

 その要因の一つが、黒潮の北上と、周囲よりも海水温が高い「暖水渦(だんすいうず)」だ。

 サンマは冷たい親潮に乗って、日本の沿岸近くにやってくる。しかし、南からの温かい黒潮が通常よりも北上。黒潮から分かれた暖水渦が、北海道東部沖に停滞し、サンマが日本の沿岸に近寄りにくい状況が続いているという。

 漁業情報サービスセンターの渡辺一功・水産情報部長によると、このあと日本近海にやってくるサンマは、事前の調査では体が小さく分布量も少ないという。10月下旬以降のサンマは小さめで、水揚げ量も減っていく見通しだ。渡辺さんは「比較的多く出回っている今のうちに、味わっておくことをお勧めします」と話す。(山田暢史、山本智之)

大衆魚に戻る日は 養殖の動きも

 漁獲量が減るサンマの養殖に…

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